偉くて賢い人が書く「社会保障本」は、製薬など産業界との関係性には言及しない

 みなさん、お元気ですか?いやあ、お花見の季節がやってまいりましたあ!

さて、このブログでも何度か書きましたが、目下わたくし、社会保障制度とは何か?という大命題に真正面から取り組み、医療技術、医薬品と社会保障の適切な関係性を自分なりに追求したいと、勝手に奮闘中であります。で、昨年来、色々、書籍を読み漁っているわけですが、元厚労官僚で、在アゼルバイジャン大使、香取照幸氏の「教養としての社会保障」(東洋経済新報社)は読み物として面白かったです。

みなさん。この本はもうね、お勉強本じゃないですよ。だって言いたい放題なんですもん。いやよくここまで言うね~って、ある種の爽快感に包まれます。題名は「教養としての社会保障」ですが、違うでしょ、これは。「厚労官僚が考える社会保障」に改めるべきですよ。どういうことかっていうと全編を通じて貫かれている基本理念が社会福祉国家、つまり社会福祉には惜しむことなくお金をつぎ込み、官僚が全体を管理する「大きな政府」を志向しているのです。濃いなあ~。17年6月に発刊されたのですが、先日、大型書店で見たらベストセラーの棚にあって、今や3刷以上、版を重ねている。香取さんは厚労官僚時代に、厚生白書の編集を担当したことがあって、その白書が例年になく、飛ぶように売れたという伝説があるくらいですから、なんかツボを押さえているんですね。きっと。

どういうわけか、というか、香取さんの本が売れて、触発されたのか。厚労省時代に香取さんの上司だった山崎史郎氏も、17年9月に「人口減少と社会保障」(中公新書)を発刊していますが、こちらはキャリア官僚の論文そのもの。通読するのに結構、体力、気力がいります。正直、あんまりおもしろくない。で、香取さんの本に戻るのですが、「おわりに」にある厚労省の後輩たちに発信したメッセージがまたかっこいいんですわ~。「実態把握能力」「コミュニケーション能力」「制度改善能力」の3点について自説を述べているんですが、これは厚労官僚でなく一社会人にとっても、非常に示唆に富む、有益なメッセージだと思います。まあ、いわば香取流「五輪の書」とでもいうべきものですね。熱いです!!

  しかし、この本には致命的な欠落があります。製薬企業をはじめとする産業界と社会保障の関係性、そのあるべき姿、将来像を何ら提示していないのです。敢えて回避したとしか考えられない。香取さんほどの方でも、こうですから。「解」を出すのは相当、困難なわけです。ちなみに、山崎氏の本にも全く書かれていません。「医療保険制度で、イノベーションを評価すべき!!!」なんて、一行たりとも書いていない。どうやら、権威に頼っているわけにはいかないようです。なので製薬業界のみなさん、議論を重ねましょう!!!

  写真は香取氏と、その著作。それではみなさん、素敵な一週間をお過ごしください!

 

 

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