【10月19日発】新薬創出加算もラグ・ロス解消を重視!「企業要件」緩和は必至!

 

◆新型コロナ以前の中医協薬価専門部会

 2024年度の薬価改定に向けた議論が年末に向けて急ピッチで進んでいる。10月18日、厚労省の中央社会保険医療協議会薬価専門部会では、新薬創出加算の見直しがテーマになった。診療側、支払い側、業界の意見には隔たりはあるが、かみ合っている部分も見えてきた。

 御承知の通り新薬創出加算の正式名称は「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」という長ったらしいものだ。基本的に前半の「新薬創出」はイノベーションの促進、後半の「適応外薬解消等」は国民に不利益を与えかねないドラッグラグ・ロスの解消を指している。10年度に試行的に導入された際は、業界に対して「前半は業界の主張を飲むから、後半もしっかり頼むよ」という趣旨だった。従ってこの加算の見直しは、毎回、前半と後半のバランスが問われる。

 ドラッグラグ・ロスとは、海外にはあるのに、日本にはない、あるいは承認審査などが遅れ、使用可能となる時期に差が生じる医薬品が多い実態を指す。加算導入時は、厚労省審査当局の審査体制が脆弱で、企業が申請しても承認が長引くことがあり、それを嫌って企業が日本での新薬開発を後回しにするという実態があった。つまり厚労省当局の事務処理能力が“諸悪の根源”として、かなり大きくクルーズアップされていた。しかし、昨今生じているドラッグラグ・ロスは、それとは様相が異なる。

◆ドラッグラグ・ロス問題は

 10年前と背景が違う

 厚労省は18日の薬価専門部会で、米国研究製薬工業協会(PrRMA)がまとめた分析資料などを引き合いに「日本では薬事承認を得た品目で、企業から薬価収載申請の希望があるものは、ほとんど標準的な事務処理期間(薬事承認から60~90以内)に薬価収載しており、欧州各国と比較しても迅速だ」と言い切った。

 薬事申請から承認までの期間は、すでに海外と比べてそん色がないことはすでにはっきりしている。そのうえ、18日の部会で、厚労省は承認から薬価収載までの期間も迅速であることを示したのだ。つまり、現在生じているドラッグラグ・ロスは厚規制当局の事務処理能力の問題ではないことを明確にした。

 しからば現在のドララグは何が原因なのか?24年度の薬価改定では、根源的な「問い直し」「改善策」の創出が焦点だ。

 企業の視点に立てば、薬価の付け方、運用次第で市場の魅力も変わる。とはいえ、国民皆保険を備える日本ではすべてビジネス思考の自由に委ねることもできない。

新薬加算の企業要件緩和は

 実現するだろう

 18日の部会では、新薬創出加算の見直しがテーマになった。

 新薬創出加算を巡って製薬業界は、特許期間中で大きな値引きをしていない(加重平均乖離率内)医薬品は、すべて対象とし、改定時でも、薬価を維持すべきと主張する。

 いまの新薬創出加算は「企業要件」があるため、運用は極めて限定的で、革新的な新薬や、未承認薬の開発要請に応えた数などで、加算に差をつけている。従って、特許期間中の医薬品を持っているが、100%薬価が維持される要件をクリアできるのは全体の24%にとどまっている。

 そうした状況を踏まえ、製薬業界は「一定指標で企業に優劣をつけるべきではない」とし、「企業要件」の撤廃を求めている。支払い側、支払い側は「撤廃」を受け入れていないが、いまのままの「企業要件」だと、革新的新薬を生み出す力を持つベンチャー、スタートアップ企業にとって不利だとの認識は共有している。従って、ベンチャー、スタートアップが加算を取りやすくするための「企業要件」の緩和は、実現するだろう。

 もうひとつの論点は加算累積額の返還時期。今は2年に一度の本改定時だが、中間年改定が実施されるようになって以降、支払い側から「中間年、あるいは年二回の後発品収載時にも、返還すべき」というタカ派的な意見が出ている。しかし、この意見に、診療側の医師会、薬剤師会とも消極的だ。18日の部会では「毎年改定が、ドララグロスに与えた影響を考えると、中間年改定時の累積返還は慎重に検討すべきだ」(日本医師会・長島公之常任理事)との意見表明があった。

 そのほか新薬創出加算が何度も見直しを重ね、複雑になっていることから「もう少しシンプルできないか」との意見が上がった。

 以上、いまのところの議論から推察すると、新薬創出加算については①ベンチャー、スタートアップを考慮した企業要件の緩和②累積返還時は2年に一度を維持③運用ルールそのもののシンプル化ーーが、24年改定で、何らの形で実現するだろう。

 

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