イベルメクチンの発見は「幸運な偶然」ではない!「人まね」はダメ!(笑)

 

 みなさんお元気ですか?

 最近、イベルメクチンを発見した大村智先生の著書を読みました。イベルメクチンは、抗寄生虫薬や疥癬治療薬として絶大な効果を発揮する薬です。

 

◆きっかけは川奈ゴルフ場近くの土壌採取から

 よく知られている話ですが、この薬の発見はホント奇跡的。何度聞いても感動してしまいます。大村先生が静岡県伊東市川奈のゴルフ場に行った際、近くの土壌を採取、その土壌の中にいた放線菌がイベルメクチンの素(エバーメクチン)を産生していたというのです。それが、いまでは病で苦しむ世界中の患者を救っています。新たな適応症も次々に獲得しています。勿論、医薬品として世に出るまでには、分離、合成、精製など他にも大変なハードルがあったのですが、始まりは「ゴルフに行ったから、とりあえず近くの土を持って帰って調べてみよう」という大村先生の素朴な行動です。こんな偶然もあるんだなあとつくづく感慨深く思うのであります。

 とはいえ、19世紀の細菌学者パスツールはこう言っています。「幸運は用意された心のみに宿る」。すなわち、しっかり準備していない人に、幸運やってこないんだよってことでしょう。大村先生のイベルメクチン発見も、単なる偶然ではなく、大村先生が常日頃、どんな時でも、新薬の開発に心を砕いていたからこそ、そのきっかけがつかめたと言えるかもしれません。

 

◆「人まねしない」 イノベーター、クリエーターの覚悟

 大村先生の新薬開発の基本姿勢は、ほかの研究者や大手企業が手掛けている物質は、絶対にやらない。「人まねはしない」ということだそうです。人まねをベースに改良すればそこそこのものは生まれるかも知れないし、そちらの方が研究者としての安泰も早いかもしれない。しかし大村先生は、敢えてそうはしなかった。新薬の発見、開発にかける執念、意気込みが、もう根っこから違うんですね。

 このエピソードは医薬品に限らず革新的な技術やモノ、サービスで社会貢献したいと考える人間にとって、大きな教訓、励みになるのではないでしょうか。

 

◆新型コロナの効果は治験結果を待つべき

 イベルメクチンは今、新型コロナ治療薬として期待されています。ただ、新型コロナに効くかどうかは現在、治験中で正式な試験結果を待つのが、科学者として誠実なあり方だと思います。なんか、結構、発言力のある一部の医師会リーダーが一時、「国の責任でイベルメクチンを早く使えるようにしろ!」とかしきりに言ってて、ビックリする(医師の判断で使うのは問題ないのに)とともに、この国の医療は大丈夫なのかなあ?と怖くなりました。新型コロナのイベルメクチン効果は、現時点で「絶対効く」とか、「絶対効かない」とか、ゼロ、イチで言い切ることは厳に慎むべきだと思います。

 写真はイベルメクチンの化学構造式。厚労省の公表資料を撮影。それではみなさま素敵な一週間をお過ごしください!

 

【お知らせ】先週、「医療保険と高額医薬品」の過去、現在、将来について講演し、社会保障問題に詳しい大学の先生と対談をさせていただき、収録を終えました。近く配信されますので、アップされましたら、またお知らせします。お楽しみに!

 

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