薬価・流通の有識者会議、初回意見を簡潔に紹介!PART①=小黒氏、香取氏、坂巻氏、菅原氏                              

 みなさん、お元気ですか?秋の気配が日々、強まっています。

 さて先週は日本製薬工業協会の会長会見(8月30日)ほか、厚労省が新設した医薬品流通・薬価有識者検討会(医薬品の迅速かつ安定的な供給のための流通・薬価制度に関する有識者検討会、8月31日)の初会合などがあり、ある意味、「節目」でした。

 有識者検討会はメンバー構成員8人。別の公的審議会でもおなじみの顔触れ方が多く、「大丈夫かなあ~?またいつものように厚労省案を追認するだけの会議体になってしまわないかなあ」と、いささか不安感が頭をよぎりましたが、少なくとも初回の議論は、割と深いところに入った感じがしました。

 構成員8人の発言について私の印象を交えて紹介いたします。今回は前半にご発言された4名。次回、後半の4名のご発言をご紹介します。

【小黒一正氏、法政大経済学部教授、元旧大蔵官僚】

◎GDP目安はむしろ「成長擁護」

 薬剤費総額の伸びを名目GDPの伸びを目安にしてコントロールすべきという持論を展開。製薬業界には「医薬品市場の伸びにキャップを設けるなんてけしからん!」と去年から大不評を買っている案だが、小黒氏によると、日本の医薬品市場の伸びが今後、マイナスになるという推計を前提に「少なくとも名目GDP以上は伸ばすべき」と、むしろ“成長擁護論”にもなっているとの認識で、市場の成長そのもを否定するものではないとの考えだ。

【香取照幸氏、上智大総合人間学部社会福祉学科教授、元厚労官僚】

 「医療用医薬品の流通が抱えている問題は、薬価改定方式の改革なしでは改革できない」と主張。一方で、医療費については高齢化の進行や、技術革新の影響で、どんな国でも伸びて当たり前。GDPの伸び率などを使った予算統制は「非現実的」と切り捨てた。最後に、米国ニューヨークのJETRO (日本貿易振興機構=厚労省職員が定期的に出向している)に依頼して仮訳した米通商代表部(USTR)の意見を披露。日本の度重なる薬価改定ルールの変更に対する、USTRの“いらだち”を代弁してみせた。※香取氏の意見は大きく3つあったが、それぞれどう関連して、どこに解を導こうとしているのか。現時点では不鮮明である(著者考)

【坂巻弘之氏、神奈川県立保健福祉大学大学院教授 】

◎AGは「形を変えた長期品依存」、GEは総価取り引きでいいのでは

 主にジェネリック・バイオシミラーに焦点を絞って問題点を指摘した。品質問題などでジェネリックの安定供給に支障が起きている現状のバックステージで、新薬メーカーが、特別に許可して、その子会社などが新薬メーカーと全く同じ薬(オーソライズドジェネリック)を作って製造供給する戦略が急増している現状を指摘。「これは形を変えた新薬メーカーの長期品(特許が切れた薬)依存体質。一物二価の問題(同じ材、サービスは同じ価格であるべきという医療保険制度の原則に反しているという意味)でもある」と指摘した。また、価格交渉について「新薬は単品単価が進んでいるが、ジェネリックは総価(まとめていくらの交渉)でもいいのではないか」と述べた。

【菅原琢磨氏・法政大経済学部教授】

◎医療費は公的に「伸びていいもの」「よくないもの」が問題!現役の負担能力を考えろ!

 冒頭、香取委員が提示した意見に異論を唱えた。香取委員が「先進国では医療費は伸びて当たり前。予算統制は非現実的」と発言したことに対して、「各国で医療費の伸びが所得の伸び以上になるのは、香取氏のおっしゃる通り」としたうえで、各国の医療保険制度にはそれぞれ違いがあることを強調。急激に少子高齢化が進む日本では、現役世代の負担の能力がどこまで持つかという現実があり、「(医療費は)公的に伸ばすものと、それ以外で伸ばすものをどう考えるかが大事だ」と述べた。薬価については「もはや日本企業のCEOでさえ、“(薬価が安いから=著者注)新薬は、日本で初めに上市しない”と面と向かって話すようになってしまった」と指摘。イノベーティブな新薬をしっかり評価する新制度の必要性を強調した。また、医療機関、薬局への医薬品納入価格について「よく都市と山間へき地ではコストが違うから価格差があるというが、実際、どこでどれだけ価格差があるのか。実態を示すデータが欲しい」と要請、厚労省が準備することになった。

 次回PART2に続きます。お楽しみに!

写真は厚労省。それでは皆様、素敵な一週間をお過ごしください!季節の変わり目につき、心身をくれぐれも大事になさってください。

 

 

 

 

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