Posted on 7月 28th, 2014 by IDAKA
みなさんお元気ですか?先週月曜日は休日だったので、2週間ぶりの更新です!暑い夏を満喫していらっしゃいますか?
さて、高血圧治療薬の臨床研究を巡る一連の不正疑惑騒動で、東京地検特捜部が本格的に動いて、早や5か月が経過しました。しかし、いまのところ起訴されたのはノバルティスの元社員と、ノバルティスだけ。個々の医師とメーカーを結ぶ不適切な金の動きやノバルティスと同様に偽りの広告宣伝を大々的に展開していた武田薬品を追い込むまでには至っていません。しかも、起訴の名目は薬事法違反の「虚偽誇大広告」。罰則は2年以下の懲役か、200万円以下の罰金です。日本最大の犯罪捜査機関、地検特捜部からすれば、ちょっと物足りないのではないでしょうか?おそらく、きっと、何とかして医師と、メーカーを結ぶ金の動きを掴もうと考えていることでしょう。しかし、今後、調査を続けて、どうしても、つかみきれなかったら(実際に、そんな事実がなかったとしたら)、それこそ「大山鳴動してネズミ一匹」。特捜部のモチベーションは低下し、捜査から手を引くかも知れません。そうなれば、武田薬品は、ホッと胸を撫で下ろすでしょうけど。。。果たして、どうなるでしょうか?検事総長が7月上旬に変わったばかりなので、特捜の本格調査も、しばらく中断、再開は8月末とも言われています。引き続き、動向を見守っていきます。
で、写真は「壮大なる自由主義の実験国家」「究極の資本主義国家」「人種の坩堝」、米国にて撮影。上はNYタイムズスクエア。下は、いまこれを書いているブルックリン7aveのカフェ「Tea Lounge」の風景です。このカフェは、いい意味で「テキトー」(笑)。みんな思い思いのスタイルでリラックスしています。ボヘミアンな雰囲気で、すごく気に入りました!!NYは、ほとんどのカフェ、一部、公園でもFree Wifiが飛んでいるので、すごく便利です。では、みなさま、素敵な一週間をお過ごしください。
Posted on 7月 14th, 2014 by IDAKA
―医師への接待禁止や医療機関の訪問規制強化などによって、日本の製薬業界のMR(医薬情報担当者)数は近く頭打ちとなり、その後減少する―。数年前から、そんな予測がありますが、どうもそうでもないようです。
MR認定センターがまとめた14年版「MR白書」によると、MR総数は6万6752人(14年3月末)で、13年度より1478人ほど増えています。07年度からずっと増え続け、13年度になって149人減ったので「いよいよMR減少時代突入か!?」と思いましたが、盛り返しました。
「コントラクトMR(派遣および契約MR)が押し上げてんじゃないの?」とお思いかもしれません。確かに、コントラクトMRは3957人で、前年度より伸びています。しかし、増えたのは764人ほどで、各企業が正社員で増やしている数と変わりません。各社結構、増やしてるんです。「医師への訪問回数が売り上げに直結する」という公式は、崩れておらず、各社もそれを信じているんですね。
とはいえ、世の中も医療現場もどんどん変化して、MRの活動内容も、それに合わせて、変化していかねばなりません。現場MRは、きっと大変でしょう。にもかかわらず、年齢別で見ると、50歳代が8791人、60歳代が1234人、双方合わせて1万人が現場に出ています。この世代は医師への接待攻勢華やかなりし90年代のプロパーを経験しながら、規制でがんじがらめの、いまの窮屈な現場でも、がんばっています。新時代で変えるべきもの、そのまま維持すべきもの。己を虚しゅうしたうえで、自らの経験に照らして、いまを見れば、本来一番、分別が付くはずの世代です(みんながみんなそうではないです。“己を虚しゅうしたうえで”というのがミソです)。しっかり現場を支えて欲しいです。
で、写真は近所を散策中に撮影(ピンボケ失礼!)。巨大マンションに隣接する公園にて。若いお母さんが、赤ちゃんを前に抱えながら、シャボン玉を飛ばして言います。男の子が、それを見上げて、つかもうとしています。子供も楽しそうだったけど、お母さんも相当、楽しそうでした(笑)なんかほのぼの。癒されましたあ~!ではみなさま、素敵な一週間をお過ごしください!
【注意】この原稿はMR数に誤りがあったため、8月5日付で、一部修正いたしました。
Posted on 7月 7th, 2014 by IDAKA
先週、かねて取材でお世話になった若くエネルギッシュな臨床医と久しぶりにお会いし、色んな話をお聞きしました。この先生、いま医薬品を使った医師主導臨床研究を進めてます。で、この研究の結果次第で、医薬品の使用量が減る可能性があります。ある疾患に対する、ある医薬品の投与について「どのくらいメリットがあるのか?」。その必要性を科学的に検証する研究だからです。だから、製薬企業からの支援は、端から期待していない。もちろん、支援があれば喜んで受けるでしょうが、積極的に要請していない。参加医師が、それこそ手弁当で、日常診療の合間を縫って進めている。医療のため、患者のためになる、と考えているからです。これぞ医師主導臨床研究です。で、最近、厚労省の補助金がようやく認められたそうです!!!一度目の申請は落とされたと聞いていたので、どうなることかと気をもんでいましたが、本当によかったです!近く、雑誌、医薬経済の誌上で、しっかり記します。
日本が科学研究に注ぐ予算は決して多くない。予算で執行する医療技術への補助金も、基礎研究ばかりで、臨床研究はないがしろにされている感があります。だから医師が臨床研究をやりたいと思っても、なかなかできない。やるなら製薬企業に支援を求めざるを得ない。で、製薬企業は株式会社ですから、完全なるボランティアでは、支援しにくい。とくに収益にマイナスになる研究にお金は出しにくい。臨床研究を巡る、ここ最近の問題は、こういう日本の研究環境が背景にあることを忘れるべきではないでしょう。
国の予算にも限りはありますから、増税に苦しむ一国民として、単純に「もっと研究に金を注げ」とは言いにくいんですが、いまある予算を、もう少し、臨床研究に厚く配分していいのではないでしょうか?製薬企業の支援は期待できないけれど、国民のために、やるべき臨床研究テーマは沢山あるような気がします。例えば、いま問題になっている高血圧治療薬ARB。それから糖尿病治療薬DPP4、SGLT2阻害薬などは、各社がそれぞれ製品を出し、複数のブランドが出ています。一体、どれが一番いいのか?あるいは違いはどこか?直接比較した研究はありません。医師がやろうと思っても、なかなかできないでしょう。かといって製薬企業に支援を求めたら、お金を出した企業の製品にバイアスがかかる。こういう臨床研究を、国がお金を出して、やって欲しいです。
で、写真は先日、カフェの前で見つけたアゲハ蝶。この後、ヒラヒラと優雅に空に舞っていきました。それと、たまたま訪れた商店街で七夕祭りに遭遇!!のどかでほんわかした雰囲気。癒されましたあ~。晴れたり、曇ったり、雨が降ったり。一番、不安定な季節です。みなさん、お体に気を付けて、素敵な一週間をお過ごしください!
Posted on 6月 30th, 2014 by IDAKA
OBらの質問状で大荒れが予想された6月27日の武田薬品の株主総会は、最近では珍しい3時間を超えるロングラン総会になったものの、GSK出身のフランス人、クリストフ・ウェバー氏の社長就任など、会社が提案した7議案は全て了承されました。ただ、OBらが事前に提出した質問状以外にも、質問がいくつも出て、武田の現状に対して、多くの株主が懸念を抱いていることがわかりました。
武田幹部への質問、批判は多岐に渡っているのですが、改めて考えさせるのは「グローバル化って一体、何?」ってことです。武田OBらは、日本人より高待遇で、外国人を幹部に迎え入れること、そしてまた急速に外国籍の幹部が増えたことなどに疑問を抱き、「これじゃあ、日本の企業でなくなってしまう」と強く反発していました。確かに、一理あるなと考えさせられます。外国企業を巨額な資金で傘下に収めることが「グローバル化」なのか?外国人を高給で迎え入れることが「グローバル化」なのか?英語のできない社員を隅に追いやることが「グローバル化」なのか?そして逆に「日本の製薬企業」ってなんなのか?今後も、そのステイタスと意義を保てるのか?今回の武田の総会で、OBらが放った疑問で、深く考えさせられました。再考というか。。。再確認すべき時なのかも知れません。
それでは、みなさん。素敵で楽しく、かつ充実した一週間をお過ごしください。
Posted on 6月 24th, 2014 by IDAKA
こんにちは!お元気ですか?で、早速ですが、昨日の続き。武田薬品が、高血圧治療薬ブロプレス(カンデサルタン)にまつわる不正疑惑で、ジョーンズ・デイ法律事務所(JD)に依頼した調査報告書の件です。
不正疑惑のきっかけは武田がプロモーションに使った販促資材なんですが、この販促資材について報告書は、全て一人の社員の判断、責任で作成したとした点、また、極めて限定的な調査であるにもかかわらず「薬事法違反には当たらない」と断定した点には、率直に言って大いに疑問が残ります。
報告書は、販促資材について「実質的に、医薬学術部グループの主席部員であったU氏が、単独で(略)全ての販促資材を制作を担当していた」とし、U氏の直属の上司については「制作された販促資材の最終確認を行うのみであり、(略)実質的に関与していなかった」と指摘、プロモーションの責任者X氏には「いつ、いかなる内容の販促資材を制作するか(略)具体的な決定をU氏に一任していた」と断定しています。要するに、U氏以外はお咎めなし。U氏の直属の上司や、プロモの責任者はJDから聞き取り調査された時、「ちょっ、なんすか?私?関係ないですよぉ。全然、知らなかったんですよ。私はあ~。ただ使ってもいいよ、ってハンコをついただけです。ええ、ええ、中身なんか、イチイチ見てられませんよ。忙しいですからね、いっつも。ほとんど見てないですから。中身なんか。よく知りません。。。。」とでも、言ったんですね。きっと(失礼。ここは飽くまで己の想像です!)。。果たして、そんなことあっていいんでしょうか?今後、何か責任を問われても「全てU氏が悪い」と、トカゲの尻尾切りになってしまう可能性があります。何か嫌あ~な感じですね。これ。JDさんには、もう少し突っ込んで欲しかったですね。
で、もう一つ。この販促資材について報告書が「薬事法違反に当たらない」と、踏み込んだ表現を用いている点。本来、法律違反に当たるか当たらないかは、司法当局が判断するものであって、この段階で、武田の依頼を受けたJDが調査報告書に書くべきだったのか?記者会見で質問したら「その点は、武田に依頼されたから」と言ってましたが。。ちょっと踏み込み過ぎの感じがします。
しかも、判断の前提となるJDの調査は極めて限定的なんです。まずは、ここが肝なんで、丁寧に書きますよ。
まず販促資材の何が疑惑を呼んだか?改めて説明すると以下です。
心血管イベントと全死亡率の発現率は、統計学上、カンデサルタンもアムロジピンも有意差がない(同等という意味)が、武田の販促資材には、視覚的に、あたかもカンデサルタンの方が有意に抑えるように見えるグラフが掲載されていた。グラフは、カンデサルタンとアムロジピンのイベント発現率の経時変化を、2本のラインで示している。心血管イベントも全死亡率も、途中までは、若干、アムロジピンの方が抑えているように見えるが、30か月を超える辺りで、双方のラインが交差し、その後、カンデサルタンの方が抑えているように見える。それが疑惑を呼んだ。武田の販促資材は、研究代表の大学教授などの写真を添えたうえで、グラフの交差部分を「ゴールデンクロス」と称し、「より長期に使うことでイベントの発現が減少していく」と明記していた。【RISFAX6月23日号から抜粋】
ということで、疑惑を呼んだグラフは心血管イベントと全死亡率の2つなんです。しかし、JDは、心血管イベントのグラフのみに着目して調査をしました。【右上、図2のグラフ】その結果、カンデサルタンの方が良く見えるようになったラインのズレは、販促資材の制作過程で、偶然、生じた可能性もあり、それほど大きくない。また、30か月を超えるとカンデサルタンが良くなる可能性も「示唆される」との表現で、断定はしていない。だから、医師である専門家なら、この販促資材に引っ張られて、「カンデサルタンの方がいい」って勘違いするようなことはない。拠って「薬事法違反に当たる虚偽、誇大広告には当たらない」と。こう結論付けたわけです。
しかし、もうひとつのグラフ。全死亡率はどうですか?【右上、図3のグラフ】このグラフ。明らかにカンデサルタンが良く見えます。これは「制作過程で偶然ズレちゃっただけ」ってもんじゃないですよ。しかも、このグラフ。カンデサルタンが良く見えるように、心血管イベントで「10%」になっていた縦軸を、わざわざ「5%」に引き延ばして見せています。死亡率の差ですよ?臨床で忙しい医師に与える視覚的な印象は、こっちのがはるかに強烈でしょう。
販促資材では、心血管イベントのグラフの真下に並べてあります。【右写真】JDさんは、なんでこっちのグラフも調べてくれなかったのか?この差がなんでできたのか?これも調査して欲しかった。
それに販促資材には「より長期に使うことでイベントの発現が減少していく」と明記してあるのに、報告書では、この点も不問に付しました。【右写真】
とはいえ、JDの報告書で新たにわかったことも沢山、あります。一番衝撃的だったのは、5ページ目の「証拠の保全」の部分。【右写真】JDの調査が入る前に、武田薬品は、関連部局のスタッフに向けて、今回、疑惑を呼んだ試験の「関連資料、印刷物の削除・廃棄を要請する社内通知を発信していた」との事実を明記、「検討対象となりうる資料が削除・廃棄された可能性がある」と訴えています。これはどうですか?調査前に、関連資料を全て捨てるよう通知しちゃってたんですよ。こんなのありですか?真相解明しようとしても、もう、ほとんど資料は残ってないですね。きっと。なんだか書いていて嫌な気分になってきました。
うーん!気を取り直して!!行きますよ!みなさま、素敵な一週間をお過ごしください!
Posted on 6月 23rd, 2014 by IDAKA
武田薬品の高血圧治療薬ブロプレスに関する医師主導臨床研究の不正疑惑で、武田薬品がジョーンズ・デイ法律事務所に依頼して進めてきた調査の結果がまとまりました。「ブロプレスは優れている」と強調したいがために、本来、製薬企業が関わってはいけない「医師主導」の研究に、武田が組織的に関与していたことが明らかになりました。しかし、不正疑惑のきっかけとなった、武田がプロモーションに使った販促資材については、全て一人の社員の判断、責任で作成したとした点、また、極めて限定的な調査であるにもかかわらず「薬事法違反には当たらない」と断定した点には、率直に言って大いに疑問が残ります。
で、すみません。本日はこれより、みっちり取材が入っております。なので、明日、再度更新し、この辺りの己(オノレ)の見解を、しっかり記しますので、是非、ご覧ください。(^_^;)
なお、疑惑が生じている武田の研究は、各紙が「CASEーJ研究」と報じていますが、先に疑惑で叩かれたノバルティスのディオバンに絡む臨床研究が 「ディオバン問題」と繰り返し報じされてきたことの公平性に鑑み、このブログでは「ブロプレスの絡んだ医師主導臨床研究」、あるいは「ブロプレス問題」と、製品名をしっかり書きます。それから、ジョーンズ・デイ法律事務所の調査を、各紙が何の衒いもなく「第3者調査」と報じていますが、飽くまで武田が対価を払って依頼した調査であり、調査の範囲、内容には何の強制力がなく、一定の限界があるので、このブログでは「武田が依頼した調査」とします。日本は言霊の国ですから、こういう微妙な表現に注意しないで、大雑把に使って、それを積み重ねていくことによって、いつの間にか事実、現実が歪んでいくと考えています。
ではみなさま、また明日、素敵な月曜日をお過ごしください!
Posted on 6月 16th, 2014 by IDAKA
ディオバン問題で、ノバルティス元社員が東京地検に逮捕されました。
容疑は薬事法違反となる「虚偽、誇大広告」。かりに元社員がデータを操作していたとしても、そのデータを広告で活用するのは別の部署ですから、元社員の行動と、広告所管の部署の行動をしっかり「線」で結ぶ証拠がないと、逮捕は難しいと言われていましたが、元社員と密接な関係にあった研究者らの裁量でできる、専門誌への投稿論文や、インターネットでの論文公開を、一種の「広告」と見なし、元社員を逮捕しました。逮捕にかける、地検の並々ならぬ「執念」を感じます。しかし、何度も繰り返しますが、己(オノレ)はこの件。すべての責任を元社員に押し付けて、一罰百戒で片づけることに大いなる疑問を抱いていいます。なぜかというと、今度の件は、業界の「構造問題」であり、「一人の悪人が、自らの私腹を肥やすために、周囲を欺いて、勝手に怪しからん事をした」という類のものではないと考えるからです。この件に絡んだ関係者の中で、元社員が社会的に、最も弱い立場にいます。にもかかわらずと言うか、だからこそと言いましょうか、昨年来、唯一個人として、メディアの集中砲火を浴び、叩けれ続けてきた。今回の件については、メディアの取り上げ方、取材姿勢にも、ものすごい違和感を感じています。一種の集団心理。「みんなで叩けば怖くない」というムードが感ぜられるからです。東京地検の捜査は終わっていないので、しばらく様子を見守るしかない。しかし、元社員を逮捕して終わりじゃあまりにお粗末。そう思います。
日本製薬団体連合会の木村政之理事長が、先週の保険薬価研究委員会の懇談会で「(国会議員を訪問していると)医療、医薬品業界への風当たりが強まっているのがひしひしと分かる」とおっしゃられていましたが、まさしくそうかもしれません。医療、医薬品業界は、色んな意味で「グレーゾーン」が大きいのです。「グレーゾーン」って言い換えれば「必要悪」、あるいは「ハンドルの遊び」、「それを言っちゃおしまいでしょう」と言って、みんなが不問にして済ませてきたことです。しかし、世の中、どんどん狭隘になっています。で「グレーゾーンを一切、なくせ」と。こうなるのです。
薬価の毎年改定。どうやら今回は見送られ、かろうじて15年4月改定はなさそうです。とは言え、15年10月に消費増税があることを忘れてはなりません。間違いなく「消費税を上乗せするだけでなく、実勢価に基づいて薬価を下げろ」という意見が出て来る。そうなると、ほとんど「毎年改定」みたいなもんです。
とまあ、色々ありますが、みなさん。変化の時です。己(オノレ)も流されないように、吹っ飛ばされないように、しっかり取材、執筆に務めます。充実した素晴らしい一週間をお過ごしください!
※写真上から厚労省のディオバン問題検討会、木村理事長
Posted on 6月 9th, 2014 by IDAKA
みなさん、お元気ですか?いやあ~、先週は降りましたねえ~。例年で言うと6月1か月分の降水量を、もう超えてしまったらしいですよ。さて、製薬業界と医師主導臨床研究が本格的に世間の批判にさらされて、ほぼ1年が経過しました。ディオバンの試験を巡る一連の疑惑に関する東京地検特捜部の捜査も、そろそろ最終局面を迎えているようです。7月には国家公務員幹部の人事異動があるから、少なくともそれまでには結論が出るのではないかと言われますが、どうでしょうか?実際、何らかの法律違反が問われ、起訴まで行くでしょうか?昨夏、雑誌医薬経済8月15日号に書いたように、己(オノレ)は、この事象を、製薬業界、医学界、専門誌ビジネスが密接に絡んだ「構造問題」と捉えているので特定企業の特定の人間を人身御供に1、2人しょっ引いたところで、何も解決しない。そんなトカゲの尻尾きりのような決着は、かえって良くない、とさえ考えています。が、どうなるでしょうか?しばらく様子を見守るしかないです。
で、一方、武田薬品のブロプレスと、臨床研究CASE―Jの疑惑、こちらは武田が第3者機関に依頼して調査しています。3月の記者会見で「調査は3か月くらいかかる」と話していたので、6月中には結論が出て、何らかの発表があっていいはずです。ただ、こういうケースがあると、いっつも思うんです。第3者機関といっても、依頼主が当の本人じゃないですか?しかも、依頼主からお金をもらって調査するわけです。だから、本当に、どこまで依頼主から独立して客観かつ冷徹な調査ができるのかなあ~って。そう思うんです。まあ、それはともかく、個人的には、ディオバンの疑惑より、ブロプレスのCASE-Jの方が、はっきりしていることが多くて、結論が出やすいと考えます。
武田は3月の記者会見で「まだ論文になる前の研究グラフを、学会発表の段階でプロモーションに使ってしまいました。これは明らかに業界のルール違反でした。申し訳ございません」と早々に謝りました。しかし、この問題の焦点は「プロモーションが論文になるより前か後か」なんて、甘っちょろいところにはありません。ブロプレス(カンデサルタン)とアムロジピンの比較試験で、心血管イベントの抑制効果が、はじめのうちはアムロジピンの方がいいくらいなのに、30か月を超える辺りで、急にブロプレスが良くなる。【右上写真、日経メディカル06年11月号に掲載された武田の記事広告】ここからいくつもの疑惑が生じているのです。記者会見も近いと思われますので、改めて問題点を整理すると、こうです。
①途中から急にブロプレスの結果が良くなるのは、なぜなのか?人為的な操作が加わった可能性はないのか?専門家は「高血圧の治療で、途中で効果が逆転するなんてありえない」と言っています。手を加えていないにしろ、なぜ急に良くなったのか?武田はその要因を検証し、はっきり答えなければいけません。科学的に問題がなく、本当に途中から良くなるなら、患者のためにも、むしろ堂々と、プロモーションに使うべきです。
②06年10月に学会発表された時のグラフは、途中からブロプレスがアムロジピンと比べて良くなっているのが視覚的に鮮明にわかる(写真の左側、基本的に右上写真のグラフと同じもの)のに、08年2月に論文化されたグラフでは視覚的にはわからない(写真の右側)ようになっている。しかも論文では42か月以降の部分がバッサリ削除されている。それはなぜか?同じ研究結果なのに、なぜ、こうも視覚的に違うグラフが出来上がるのか?また、どういう意図で、42か月以降の部分をバッサリ削除することになったのか?
③ブロプレスとアムロジピンの効果が交差する部分を「ゴールデンクロス」と称して、あたかも長く使えば使うほど、ブロプレスの方がアムロジピンよりも効果が上回ると言わんばかりのプロモーションを実施したことに問題はないか?ディオバンでは誤った研究データをプロモーションに使ったことが「虚偽、誇大広告」の疑いを呼び、薬事法違反が問われています。武田が自分たちのプロモーションで「ゴールデンクロス」を、ことさら強調していたのは明らかです。右上1番目の写真、武田が記事広告で使ったグラフを観てください。「ゴールデンクロス」の部分に、ご丁寧にも、オレンジ色の矢印が付いています。一体、誰が付けたのでしょうか?さすがに「1人の社員が勝手に付けた」とは言えないでしょう。出版社に莫大なお金を払って記事広告を掲載したわけですから、間違いなく組織的な決済が必要です。
④企業の記事広告に、何度も自身の名前と顔写真を載せて「広告塔」となり、間接的に、企業のプロモーション活動の内容に「お墨付き」を与えた猿田享男慶応大学名誉教授、CASE―J研究代表ら、複数の学者、研究者らは何の責任も問われないのか?
ざっとこんなところです。記者会見では、最低、以上の部分は明らかにして欲しいです。で、3番目の写真は都内某所で撮影した紫陽花。花ってすごいですよね。自分がいつ咲くべきか。しっかり見極めている。梅雨時はこの人の出番です(*^_^*)
では、みなさま充実した一週間をお過ごしください。
Posted on 6月 2nd, 2014 by IDAKA
ジェネリック医薬品(特許が切れた後に出てくる先発品と同一成分同一効能の医薬品=後発品)メーカーの団体、日本ジェネリック製薬協会が5月28日に開いた総会後の懇親会で、吉田逸郎会長(東和薬品社長)、澤井光郎副会長(沢井製薬社長)らが、後発品企業に課せられた使命と、現状を語りました。
吉田会長は14年度の薬価改定で、後発品の薬価への締め付けがかなり厳しくなったことを指摘しながら、「16年度までに国内の医薬品数量の60%を後発品に置き換える」とする政府目標の達成に意欲を見せました。沢井副会長も、とかく値引き競争に傾きがちな後発品市場に危機感を表明、「適正な価格」「適正な競争」を訴え、各社に「自制」を求めました。確かに4月からの薬価改定は、後発品にとって厳しいでしょう。これまで銘柄別に設定されていた薬価が、3つのグループに括られてしまったうえ、はじめて出てくる後発品でも、特定の成分で10品目を超えると、薬価は先発品薬価の半分(通常は7割)にされてしまうのですから。。。ただ、各社の経営が厳しいかと言えば、そうでもない。逆に、総じていいくらいです。今回、ジェネ協の総会会場も、恒例の東京プリンスから、かなり格を上げてザ・プリンスパークタワーに移りました。
いよいよ再編か?専門メディアは、このところ、そんな観測を建てて煽りますが、各社経営が順調なうちはそれはない。もう少し先になりそうです。ジェネ協の会員各社は、潤沢な収益を、どこに投入し、どこに向かうのか?まさしく、いまの選択、行動が5年後、10年後の姿を決めることになります。
写真は右上から吉田会長、沢井副会長。そして近所の幹線道路上でけなげに咲いていた昼顔の花。みなさま。強烈に暑い日が続きますが、熱中症にお気をつけて。充実した素敵な一週間をお過ごしください!
Posted on 5月 26th, 2014 by IDAKA
日本製薬工業協会の会長に、大日本住友製薬の多田正世社長が就任されました。ただ、臨床研究を巡る製薬企業の不祥事が多発している現状から、先週21日の就任会見で、多田会長の口から出た言葉は「コンプライアンスの徹底」「社会的信頼の回復」など、まるで罪を悔いて更生を誓うような、重苦しいことばかりになってしまいました。
製薬業界は、ちょっと前まで政府に「日本経済を成長させる牽引車」と持ち上げられていましたが、そうした期待感も、臨床研究を巡る不祥事で、陰りが出てきたような気が致します。会見でコンプライアンス問題ばかり、話さねばならなくなった多田会長も「内心忸怩たる思いがある」とおっしゃっていましたが、ちょっとさびしい感じがしました。記者の質問も、ほとんど臨床研究の不祥事に関するものばかり。みんな「正義の味方」気取りで、まるで事件を追う一般紙の社会部みたいです。
曲がりなりにも、会長就任会見ですから。いくらなんでも、これじゃ暗すぎる。業界専門記者としては、前向きな話も聞きたいですよ。で、己(オノレ)は敢えて、多田会長に、製薬産業の現状と将来について私見をお聞きしました。多田会長からは「知識、技術のすそ野が広い。創薬の社会的意味をより深く考え、リスクを取って投資すれば必ず報われる」と、前向きな回答が返ってきたので、ほっとしました。「歴代会長と比較して、知識、経験という点において、確信が不足している。もう少し時間をいただき、お、変わったなて言っていただけるようになりたい」と多田会長。今後のご活躍を期待したいです。
というわけでみなさま。素敵な一週間をお過ごしください。なぜかこのところ、暑い日が続きます。ご自愛ください!