Posted on 10月 27th, 2023 by IDAKA

◆沢井製薬・沢井光郎会長
沢井製薬が九州工場で製造していた胃潰瘍治療薬テプレノンカプセルで、長期に渡って不正な溶出性試験を実施していた事実が発覚した。溶出性試験は、販売後の医薬品が服用者の体の中でしっかり溶けて効能、効果を問題なく発揮するかどうか、数年毎に確認する試験。厚労省の省令(GMP)で企業に精密な実施が義務付けられている。試験結果で、溶け具合(溶出性)が基準値を極端に下回ること(OOS=OUT OF SPECIFICATION)がわかったら、本来の効能・効果を発揮せず、治療に影響を及ぼしかねないので、使用期間内でも回収などの対応が必要になる。OOSは、カプセルの経年劣化が影響して発生することが多い。沢井は、そのカプセルを比較的新しいモノに替えて試験を実施していた。主要成分(内容物)を、比較的新しいカプセルに詰め替えれば、溶出性は維持できて当たり前で明らかなGMP違反だ。沢井は、テプレノンでそれをやっていた。

◆沢井製薬・木村元彦社長
沢井は「同様の事案は、テプレノン以外の製品にはない」と説明、すでに全ロット回収し、今のところ健康被害報告はない。
ただ、小林化工、日医工の不正発覚以降、後発医薬品各社の製品回収、限定出荷が続出。行政処分が次々に下され、国民の不信感は増幅している。例え、販売後の劣化を確認する溶出性試験で、それが一製品に止まっていたにせよ、後発品業界トップ3に名を連ねる沢井で不正が発覚したのだから、社会的な衝撃は大きい。信頼を回復するには、相当の時間を要するだろう。一体なぜ、こんな不正が起き、しかも長期間続いたのかーー。沢井が10月23日に発表した特別調査委員会の報告書を読むと、その原因の一端が見えてくる。
Posted on 10月 25th, 2023 by IDAKA

◆MR認定センターの記者会見風景、左から近澤洋平専務理事・事務局長、小日向強企画部長、楳坂宏試験事業部長
公益財団法人MR認定センターが10月25日、記者会見し、2026年の制度改革に向けた取り組みについて説明した。近澤洋平専務理事・事務局長は「薬物療法の高度化、専門化、個別化が急速に進み、従来の教科書には載っていないものも出てきている。一方、医薬品の承認審査も迅速化され、市販後の情報収集・提供の重要性が増している」とMRを取り巻く環境が大きく変化している現状を強調。そのうえで「当センターは、公益財団法人だ。その観点から今の制度は“公益性”“公正性”を担保できているか。今一度、再検証し、時代の変化に適応する見直しを進める」と意欲を見せた。
Posted on 10月 20th, 2023 by IDAKA

◆新型コロナ禍前の中医協薬価専門部会
24年度の薬価改定内容を詰めるため、厚労省の中央社会保険医療協議会・薬価専門部会が20日に開かれた。ドラッグロス・ラグ解消に向けた「新薬の評価のあり方」がテーマ。前々日(18日)は、その各論として「新薬創出加算の見直し」(当サイト10月19日発)を議論したが、今回は①日本に革新的な新薬を早期に呼び込むための薬価評価(以下、早期導入評価)②開発が後回しにされがちな小児用医薬品の薬価評価(同、小児薬評価)③新薬の有用性を薬価に上乗せ(加算)して開発インセンティブを付与する薬価評価(同、有用性系評価)の3つに焦点を絞って議論した。製薬業界案はどう受け止められたかーー。部会論議をレポートする。
Posted on 10月 19th, 2023 by IDAKA

◆新型コロナ以前の中医協薬価専門部会
2024年度の薬価改定に向けた議論が年末に向けて急ピッチで進んでいる。10月18日、厚労省の中央社会保険医療協議会薬価専門部会では、新薬創出加算の見直しがテーマになった。診療側、支払い側、業界の意見には隔たりはあるが、かみ合っている部分も見えてきた。 会員の方はコチラをクリック »
Posted on 10月 18th, 2023 by IDAKA
エーザイがバイオジェンと共同開発した早期アルツハイマー認知症(AD)の進行遅延薬(進行を遅らせる薬)レカネマブを医療保険の薬価でどう評価するかーー。10月18日、厚労省の合同部会(中央社会保険医療協議会薬価専門部会・費用対効果評価専門部会合同部会)で議論があった。エーザイは「ADの進行を遅らせることができ、結果、介護者の負担及び公的介護費用を軽減できる」とする学術論文を提出、合同部会では、その主張を受け入れるか否かが焦点だった。【写真=国立保健医療科学院・福田敬氏(保健医療経済評価研究センター長)】
Posted on 10月 11th, 2023 by IDAKA

厚労省の社会保障審議会医療保険部会(以下、医療保険部会)で薬剤の患者負担見直しが議論の正式テーマになった。患者負担の見直しは、処方医や患者の行動を変え、製薬ビジネスを直撃する。今後、どうなるのか?
Posted on 10月 6th, 2023 by IDAKA

医療用医薬品の「流通のあり方」もいよいよ本腰を入れて議論する時代を迎えた。厚労省の有識者検討会報告を受け、流通改善懇談会(流開懇)が制度、政策に立ち入った議論を展開している。まずは「流通改善ガイドライン」(産官学の流通専門家、当事者による申し合わせ事項)の改訂作業を急ぐ。これからどう動くか。。。。公定価格と納入価格の違いによって生じる薬価差益をいかに検証するか。。。「流通のあり方」は、現行薬価制度に直結する。
Posted on 10月 4th, 2023 by IDAKA

エーザイがバイオジェンと共同で開発した早期アルツハイマー型認知症(AD)の進行遅延薬レカネマブを巡り、厚労省の中央社会保険医療協議会薬価専門部会が10月4日、2回目の会合を開いた。果たして薬価はどうなるか?またエーザイが提出している費用対効果データは認められるのか?
Posted on 9月 29th, 2023 by IDAKA

医療現場や薬局で必要な医薬品が足りなくなり、不安を招く「医薬品の安定供給問題」ーー。なぜこのような現象が起きているのか。このサイトで9月8日、12日、22日の3回に渡ってレポートを配信した。今回は最終回。政府、行政の施策的な問題点を洗い出す。
Posted on 9月 27th, 2023 by IDAKA

◆エーザイの内藤晴夫代表執行役(CEO)
エーザイがバイオジェンと共同開発していた早期アルツハイマー型認知症(AD)の進行遅延薬(進行を遅らせる薬)レカネマブが25日に日本で承認された。ADの根本原因のひとつである脳内に蓄積したアミロイドβたんぱく質を除去する薬で、プラセボと比較した大規模国際臨床試験で疾患の進行遅延を証明した。アミロイドβ除去を狙った新薬薬開発は海外のグローバル大手企業が20年近く前からチャレンジしていたが、ことごとく失敗。一時、あきらめムードも漂っていた。それでも日本のエーザイは奮闘を続け、今回、米国(7月正式承認)に続き、日本でレカネマブの承認を勝ち取った。
人口の高齢者比率が増大する今、ADはじめとする認知症の予防、診断、治療体制整備は喫緊の課題だ。日本では今年6月、国民への啓発を目的とする「認知症基本法」が成立、今後、国を挙げて本格的な対策に乗り出す。エーザイの飽くなき新薬開発チャレンジ、そして今回の承認は、国家施策の背中を押し、課題克服に“一筋の光明”を注いでいる。まさに快挙で、深く敬意を表したい。まずは「おめでとうございます!」と言いたい。しかし、今後、克服すべき課題の「山」は高く、すそ野も広い。幅も厚い。レカネマブの承認は「スタートラインに立った」に過ぎない。