新型コロナのワクチン、治療薬開発を「続けさせていただきたい!」 塩野義の手代木社長が訴える!「平時の国家備蓄」「余剰はアジア供給」という“新たな枠組””も提案

 

 みなさんお元気ですか?すっかり秋になりました!

 さて新型コロナウイルの感染拡大。このところ弱まっているようです。しかし、なぜここにきて急に弱まったのか?その要因は、はっきりしていません。従って、この先、感染状況がどうなるかもまったくわからない。いい方向でも、悪い方向でも、あらゆる「可能性」はまだ残っている。だから、軽々な発言は慎みたいと思います。縮小の要因が分からないまま、将来について言及、予測しても意味がないからです。メディアに頻出する「専門家」の方々も、確証が得られない「予言」は止めて、しばらく黙っていて欲しいものです。混乱するだけだから。

 ただ、これまでのパンデミック(感染爆発)、インフォディック(パニックに乗じた虚実ないまぜの情報氾濫)がなぜ起きたか?根本要因を考えると、最も大きな要因は、ワクチン、治療薬がなかったからだと考えます。

 昨秋、ワクチンが出て、最近、新たな治療薬も少しずつ出てきているのですが、いまのところ外資系メーカーの製品がほとんど。日本のメーカーのものは正式承認されていません。

 そんな中、塩野義製薬がワクチン、治療薬、抗体検査、抗原検査などフルラインでコロナ対策製品を揃える構えです。「国産ワクチンが必要だ」とよく言われますが、いま開発を進めているのは塩野義と、KMバイオロジクス、第一三共だけです。さらに治療薬は塩野義1社のみ。

 国内の他の製薬企業は、感染症治療薬やワクチンの開発に乗り気ではありません。もし対象とする感染症が流行しなければ、出番がなく、収益ダメージが大きい。ビジネス上、リスクが高いのです。ただ、感染症はいつどこでどのような規模で、またいつまで続くのかわからない。一度、パンデミックになれば今回のコロナのように社会的にダメージは計り知れない。

 ですから、感染症対策は、本来は「健康予防政策」というよりも、むしろ「国家安全保障政策」として取り組むべきなのです。その一環で、国産ワクチン、国産治療薬の開発促進にも力を入れて欲しい。

 塩野義製薬の手代木功社長は9月29日に開いた記者会見でこう訴えました。

 「ここ2年程、インフルエンザの流行がなく、関連治療薬の売り上げはほぼゼロだ。このまま感染症ビジネスを続けていけるのかという状況だ。しかし、続けさせていただきたい。困っていない時、平時はインフルエンザ、コロナ治療薬は国が備蓄していただく。ワクチンも買い上げていただき、状況によってアジア諸国に供給する。そういう新しい枠組みを作っていただきたい。感染症の特殊性をご理解いただきたい」。

 日本の感染症対策は「喉元過ぎれば熱さ忘れる」。流行期あるいは流行が起きそうになると、大きな議論になるが、収束すると忘れてしまい、何の対策も準備しない。その繰り返しでした。今回の新型コロナ禍は、しっかり教訓を政策に活かしてもらいたいもんです。

 写真は記者会見に臨む塩野義製薬の手代木功社長です。それでは皆様、素敵な一週間をお過ごしください。皆さんは食欲の秋?読書の秋?楽しみましょう!

 

【お知らせ】ブログ更新は明日5日(火)となります。

 みなさんお元気ですか?毎週月曜更新の薬新カフェ。今回は都合により明日5日(火)にさせていたさきます。よろしくお願いいたします。

 

コロナ禍でメディアに出過ぎて自分がまるで「芸能人」か「英雄」になったかのように勘違いしてしまった残念な「専門家」がいるよね

 みなさん、お元気ですか?一気に気温が下がり、秋に突入したような気配です。

 さて新型コロナの感染抑制策。新たなフェーズを迎えます。もう1年半以上、「行動抑制」「人流抑制」「自粛!」「自粛!」「自粛!」「危ない!」「危ない!」「危ない!」の一辺倒でしたが、これからは、感染がゼロにならない中で、社会経済活動を回す「ウィズ コロナ」の方向に少しずつ舵を切る。そんな感じです。いやあ長かったあ。

 にしても今回のパンデミックを振り返ると、同業だからかメディアの発信のひどさが目につきました。よもやここまで、滅茶苦茶だとは思いませんでした。心底がっかりしました。というか危険です。なんでもかんでも、とにかく恐怖心を煽る方向で、インフォデミック(虚実ないまぜの情報洪水)が起きました。取材も、強く恐怖心を煽る人のところに各種メディアが殺到、特定の人が何度も何度も繰り返し登場しました。取材を受ける側も、メディアに何度も取り上げられているうちに、何かまるで自分が芸能人や、英雄になったように錯覚してしまったのではないでしょうか。ふるまいから見て、そう思わざるを得ない方があります。まあ、そういう方も、ある意味、メディアの犠牲者かもしれませんが。。。。。

 メディアは本来、公平を期すため、かりに「右」と主張する人を取り上げたら、次は「左」の人を取り上げるのが原則だと考えますが、今回のコロナ禍は「自粛」「自粛」「自粛」のオンパレードでした。各種メディアの情報が堰を切ったかの如く、一方向に大量に勢いよくドドドッと流れる現象には、そら恐ろしささえ感じました。

 で、コロナ報道で何度も取り上げられている「専門家」。メディアが使う常とう手段です。とりあえず人の目をひく肩書をつける。しかしよくよく考えると一体、なんの「専門家」なのか全くわからない。

 その方たちがいまも「感染は再び拡大する“可能性がある”」「また大きく増えることも“あり得る”」「ワクチンの効果は“100%とは言えない”」とかおしゃられています。当たり前じゃないですか?こんなことなら誰でも言えますね。「行動抑制緩和は“個人的には“まだ早いと考えています」とかいうのもあります。専門家としての意見を聞いてるのに、個人の感覚にすり替えちゃうってどうですか?(笑)

 何しろ、もうこういう無駄なコメント、無駄な情報はいらないです。「専門家」の皆々様。しっかりご自分の領域でお仕事に専念してください。

 写真は神田のラーメン屋サカエヤさん。学生時代からある老舗ですが近く閉店、移転するとのこと。この味のある佇まいがなくなってしまうのは残念です。長い間、ありがとうございました!新店期待しております。それでは皆様、素敵な一週間をお過ごしください。

 

国産ワクチン vs 海外ワクチン!「ガチンコ勝負」にKMバイオロジクスが挑戦

 

 みなさんお元気ですか?今週はいわゆる“飛び石連休“でちょっと落ち着きませんが、いかがお過ごしですか?

 さて新型コロナ感染。ワクチン接種も浸透し、数値上は若干、落ち着いてきましたね。いずれにせよ、ウイルス性感染ですから、今後も感染者数は季節とか、変異とかで、上がったり下がったりするでしょう。もう、そのたびに一喜一憂しているわけにはいきません。

 で、ワクチンはファイザー、モデルナ、アストラセネカと、いまのところ外国産だけなんですが、国内メーカー、塩野義、KMバイオロジクス(MeijiSeikaファルマの子会社)も開発を急いでいます。

 KMバイオロジクスの永里敏秋社長は18日に熊本市で開いた市民公開セミナーで、不活化ワクチンの治験(最終試験)を10月から開始すると発表しました。不活化ワクチンは、感染力を削いだ病原体を体内に投入して免疫力を高めるワクチン。この技術は、すでにインフルエンザワクチンで広く使われており、有効性、安全性は高いと期待されています。

 しかも今度実施する治験は、プラセボ(偽薬)との比較ではなく、ファイザーやモデルナなどすでに承認されているワクチンとの比較試験だそうです。要するに、外国産ワクチンと「1対1のガチンコ勝負」に挑むわけです。有効性、安全性が同等以上なら承認されます。もし有効性、安全性が同等どころか、上回るようなら日本のワクチン技術が極めて優秀であると証明することになります。期待をもって試験結果を待ちたいと思います。

 写真はKMバイオロジクスの永里社長です!それでは皆様、素敵な一週間をお過ごしください。

【お知らせ】

 講談社、現代ビジネスに新型コロナ禍における「かかりつけ医」の現状と課題について一般向けの記事を書きました。どなたでも無料でお読みいただけます。お時間がございましたら是非、お読みください。

新型コロナで判明した「かかりつけ医」の根本的な「システム不備」/医療体制の「弱点」が浮き彫りに…

 

 

 

 

特許切れ薬品の「新団体」が発足、閉塞感を吹き飛ばす活動に期待!!

 みなさん、お元気ですか?外気はまだ暑いままですが、少しずつ秋独特の涼風が混じるようになってきました。新型コロナの緊急事態宣言は9月末まで延長。まあこの調子ですと、その後も、せいぜい、まん防止等重点措置への移行というところでしょう。。。行動制限がスッキリ明けるのはもう少し先になりそうです。

 さて本日13日、特許期間が満了した医薬品、いわゆる「エスタブリッシュ医薬品」に関する政策提言を目的とする、新団体「日本エスタブリッシュ医薬品研究協議会」が発足、活動を開始しました。

 発起人代表は武田テバファーマの松森浩士社長【写真】です。また、アドバイザーには医薬品業界に精通した元厚労省審議官、唐澤剛氏(慶応大大学院、メディア研究科、特任教授)が名を連ねています。

 私の感想は「いよいよ来たかあ」です。

 エスタブリッシュ医薬品と言うからには、後発品医薬品(ジェネリック=GE)だけでなく、新薬の特許が切れた後、その新薬メーカーが子会社などに製造販売を譲渡する「オーソラーズド・ジェネリック=AGE」も射程圏に入っているのでしょう。

 これまで特許が切れた医薬品の業界団体と言えば、日本ジェネリック製薬協会(GE薬協)だったんですが、今度の新団体は、製薬企業のみならず、卸、原薬メーカーも取り込む考えで、GE薬協より、会員のすそ野は広くなりそうです。また、「政策提言を行っていく」としており、よりアグレッシブな活動が期待されます。

 GE薬協の会員数は現在38社。後発品の製造販売を専業とする中小メーカーがほとんどです。

 一方、今回発足した新団体には、GE薬協に加盟していない、あゆみ製薬、ヴイアトリス製薬、白鳥製薬ほか、先頃、日医工に資本参加(9.9%)した大手医薬品卸、メディパルホールディングスも参画しています。GE薬協の加盟社で新団体に参画するのは現在、武田テバのみです。

 今後、大手新薬メーカーの許諾を受けて、AGEを製造販売している大手メーカー子会社などが新団体に加盟するかどうか。。。そこが焦点になるでしょう。

 新団体の発起人代表、松森氏はファイザー日本法人の取締役執行役員時代に、特許が切れた医薬品を「エスタブリッシュ医薬品」と命名、事業化を推進したリーダーです。17年3月、武田テバのCEO兼社長に就任、21年2月、武田テバの大工場を日医工に売却するなど「辣腕」で知られます。

 ここ最近、承認時の製造法を逸脱した後発品が相次ぎ、後発品専業メーカーの信頼が揺らいでいます。そんな中での新団体設立、今後の活動が大いに注目されます。

 写真は新団体の発起人代表、松森氏。新団体の活動で閉そく感を打ち破る「新旋風」を巻き起こして欲しいです。それでは皆様、素敵な一週間をお過ごしください!!!

 

 

 

 

治療用アプリが普及すれば「安易な高血圧薬の処方」は減るに違いない!

 

 みなさん、お元気ですか?今週はシトシト雨でスタート。季節の変わり目で、気温の変化も激しくなっていますが、お変わりはありませんか?

 さて先週9月3日、治療用アプロの旗手、キュアアップが記者会見を開き、5月に薬事申請した高血圧患者向けアプリ(未承認)の臨床試験結果を発表しました。アプリで継続的にメッセージを受け取った患者は、生活習慣改善の取り組み意識が高まり、アプリを使わない患者より血圧が有意に下がったとのことです。しかもアプリ使用者と未使用者の降圧効果の差は、途中で薬を使用しようが、しまいが数値的にほとんど変わらなかった!!!これは衝撃です。。。。

 これまで高血圧の治療というと「即、医薬品処方!」というのが一般的でしたが、このアプリが承認され、医療現場で普及すると、トレンドが大きく変わるかもしれません。現在申請中。順調にいけば来年には、承認される見通しです。

 いやあ、疾患治療もDX(デジタルトランスフォーメーション)が急速に進んでいるんだなあ~。と良い意味で衝撃を受けました。

 ちょっと短いですが、本日はこれで。キュアアップの会見記事は当社発刊、MEジャーナルで詳報しております。是非、ご覧ください。

 写真は都内散策中に撮影。とある小さな美術館の玄関前。なごみます(笑)。それでは皆様、素敵な一週間をお過ごしください!

【MEジャーナル・9月6日号】

高血圧治療薬の“適正使用”に「期待の新星」!

キュアアップ 治療用アプリの「秘めたる起爆力」

 

 

 

デジタル、リモート化を進めながらも、その限界、デメリットを知っておく必要がある!

 

   はあい!みなさまお元気ですかあ?

 今週で8月が終了、9月に突入します!相変わらずコロナ禍の各種政策で「ヘンテコリン」な日常生活が続いていますが、食欲の秋、読書の秋に備え、今のうちに基礎体力を養っておきましょう!

 さて本日8月30日、Reuyers Events  Japan(ルータス イベンツ ジャパン)さまから送っていただいた調査レポートによると、コロナ禍で、製薬および医療関連企業の各種業務にデジタルツールが急速に浸透している現状を裏け付けました。

 日本国内関連企業を中心に442名を対象にした調査なんですが、マーケティング、メディカルアフェアーズ(学術情報提供)、臨床開発の各部門でリモート化が進んでいます。まあ、当然と言えば当然の結果でもあります。おそらくコロナ禍が終息しても、デジタル、リモートの利用は続き、リアル(直接触)との組み合わせが主流になるでしょう。

 ただ、この調査で面白かったのは、医師や医療従事者との会議は、半数以上が将来、「対面」の割合が少しずつ戻ると回答している点です。やはり皆さん、リモートでは伝えにくい、伝わりにくい、人間そのものが発する情報交流があるとお考えなのでしょう。

 コロナ禍で急速にデジタル、リモート化した世の中。すべての交流がメール、電話、PC画面のやりとりになっております。こうした手法は、必要最低限の連絡には最適ですが、お互いが持つ深部のやり取りには限界があるように感じます。

 デジタル、リモート化への対応を進めながらも、その限界、デメリットも知っておく必要があると考えています。大事なものを失い、「それでいい」と開き直ってしまえば、人と人の直の交流は軽視され、ついには「すべての業務はAI(人工知能)に任せりゃいいじゃん!」てなことになりかねない。昭和生まれに私としては、そんな世の中にならないで欲しいなあと、心から願う今日この頃です(笑)

 写真は日比谷公園にて。この風景はいつ来ても変わらん!久々に霞が関にてリアル取材!帰りにほっと一息つきました。それでは皆様、素敵な1週間をお過ごしください!

 

 

コロナ対策は自民党総裁選、衆院選挙が終わるまで「現状維持」なのか?!

   

 みなさんお元気ですか?2021年の夏ももう終わります。空の青さも雲の形も秋めいてきました。海水浴、お祭り、花火、ビアガーデンなどなど。日本の夏の風物詩は2年連続で封印されました。(グスン、泣)

 新型コロナ禍となって約1年7か月。政府の対策は緊急事態宣言、まん延防止措置を繰り返すのみ。最近になってようやく医療体制整備などもポツポツ話題になっていますが、「え、今かよ?おそっ!」って思うし、遅々として進まない。いまも政府の基本政策は、相変わらず我々国民に自粛生活、行動抑制を要請するのみです。

 もう皆さんもお気づきの通り、こんなんなっちゃっているのは東京オリンピック開催(終了)、そして秋の自民党総裁選、衆院選挙が少なからぬ影響を及ぼしている。新たな政策を打ち出して成功すればいいが、失敗すればたちまち大批判を浴び、政権への支持率はさらに低下する。だから、もう秋の自民党総裁選、衆院選が終わるまで今のまま「自粛、自粛」の政策を続けるのかもしれません。

 ウイルスは変異を繰り返しますから感染を完全に制御することはできない。従ってパンデミック対策に「絶対」はない。しかし、感染者数だけを重視し、自粛と行動抑制のみを強化する従来の政策は、もう限界でしょう。

 支持率ガタ落ちの菅政権。本来は新機軸を打ち出してもいいはずなんですが、慎重ですね。チャレンジして転ぶより、現状維持のままなんとか乗り越えたいと考えているようです。なんだかなあ~。スッキリしない今日この頃です。

 写真は近くのビルの屋上から撮影。カンカン照りで暑いですが、空はもう秋の気配を帯びています。それでは皆様、素敵な一週間をお過ごしください!

 

コロナ禍での医療混乱に油を注ぐ、後発品回収!とまれ止む無し!

 

 みなさん、お元気ですか?お盆でお休みの方も多いかも知れません。自粛生活。いかがお過ごしですか?

 さて後発医薬品の回収が相次ぎ、医療現場への安定供給に問題が起きております。ただ、この回収をもって「後発品は品質が悪い」と決め付けるのはちょっと違うかもしれません。

 発端は昨年末、小林化工が抗真菌剤イトラコナゾールに睡眠薬を誤混入し、患者に重篤は副作用が生じた事件でした。その後、厚労省が後発各社に生産管理体制の再確認を強く求めたところ、まあいまのように次々に製品回収する後発品企業が出てきたわけです。

 ただ、回収にも色々あります。少なくとも小林化工のように、本来の効能とはまったく別の薬が混せてしまったなんてショッキングなケースはないようです。

 医薬品は承認時に、製造方法について「標準手順書」を作成します。そして承認後は、その手順書通りに製造することが求められます。その手順書から逸脱した手法で製造するとそれは違反になります。しかし、いま続出している後発品の回収はどうも、手順書から逸脱していたというケースが多いようです。違反行為なので、製品を回収し、体制を改める必要があります。回収が続いているのは、いかにこれまで水面下に潜って違反を続けていた製品が多かったかの証明でもあります。ですが、幸い副作用で、患者に不利益を与えるケースはないようです。

 現在、コロナ禍で医療現場は大混乱、後発品各社の回収は混乱に油を注ぎ、大きな批判を浴びています。しかし、知らん顔して黙って続けるわけにもいかない。いまのうちに改めるべきは改めておくべきでしょう。

写真は都内、散策中に撮影!なごみます(笑)それではみなさん、素敵な1週間をお過ごしください!

 

【お知らせ】

現代ビジネスに医療用医薬品の流通問題について一般向けの記事を書きました。どなたでも無料でお読みいただけます。お時間がございましたら是非、お読みください。

 

◆医薬品流通の深すぎる闇…/卸4社の「談合」で見えてきた「歪んだ商取引」の実態/悪しき慣習を排す「構造改革」が必要だ

 

 

 

MSDが単独で薬価制度見直しを提言!キートルーダの引き下げで窮状を訴える。

 みなさんお元気ですか?夏真っ盛り!本来なら海、山、川にGO、GO!という季節ですが、今年は異様な状態が続いています。なんとか乗り切りましょう!

 さて7月27日、MSDが主力の抗がん剤キートルーダの度重なる薬価引き下げに悲鳴を上げ、現行薬価制度を見直すべき、とする記者会見を開きました。薬価制度については、これまでは団体が意見を取りまとめるのが基本で、製薬企業が単独で記者会見で開くのはかつてないことです。ある意味、これも新時代の象徴的な出来事でしょう。

 キートルーダは17年初頭に「悪性黒色腫」「非小細胞肺がん」の適応で薬価収載されましたが、その後、いくつもの適応がん種を追加し、19年後半まで順調に売り上げを伸ばしていました。しかし、日本の薬価制度には当初の予測以上に市場が伸びた医薬品と、その類似品は薬価を引き下げるルールがあります。キートルーダは予想以上に市場が伸びたので、20年に一度(2月と4月に分割実施)引き下げを食らっていました。

 そして21年8月、今度は19年4月に登場した競合品テセントリク(中外製薬)が売り上げを伸ばし、テセントリクが引き下げ対象になったため、その類似品として薬価を引き下げることになりました。

 結果、キートルーダの薬価は収載時から4年間で48%低減、競合品テセントリクを下回ることになりました。4半期ごとの売り上げは19年第3四半期の約380億円をピークに徐々に減少、21年第1四半期は約250億円まで減少しており、8月からの薬価引き下げで今後もかなり厳しい推移を辿ることになりそうです。

 MSDの記者会見には、カイル・タトル社長、白沢博満上級副社長執行役員(グローバル研究開発本部長)、笹林幹生執行役員(マーケット・アクセス部門統括兼流通担当)が登壇。窮状を訴えました。具体的な見直し案も提示したのですが、今後、どこまで受け入れられるか。注目されます。

 日本の薬価制度は複雑。とくに外資系のトップから見ると「奇異」に映るようで、日本の社員に「なぜこんなに下げられるんだ」と不満を爆発させるケースも多いと聞きます。

 今後、薬価制度に関する個社での単独会見、意見表明が増えるかもしれません。少なくともMSDはその前例を作りました!

 写真はMSDのタトル社長(MSD提供)。それではみなさん、素敵な一週間をお過ごしください!

 

 

 
 
 
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